抹茶な風に誘われて。
 ――まさか。

 そう思った瞬間、大きな咳払いが響いた。

「ごめん!」

 あっさりと言い放たれて、優月ちゃんがきょとんとした顔をする。

 少しだけ申し訳なさそうに笑ったアキラくんが、そのまま教壇から背を離して、歩いてくる。

 まっすぐに進んできた足は、半ば予想通りというべきか、顔を伏せていた私の前で止まった。

 ――そ、そんな……やめてよ、アキラくん!

 心の中で願ったのも空しく、ゆっくりと肩に手を置かれた。

「残念ながら、まだ俺のものじゃないけど――滞在中には必ずそうなる予定の、俺のハニーだ。な? かをる」

 愕然とした私以外の全員が悲鳴を上げて、なかでも一番大きな優月ちゃんの声が、「はあーっ!?」と盛大に響いた。


 
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