抹茶な風に誘われて。
 以前の一件が丸くおさまって、こうして優月ちゃんたちも一緒に集まることが増えてから、なぜか亀元さんの機嫌が悪い。

 色々事情があったとはいえ、私をいじめていた張本人である優月ちゃんのことがどうも気に入ってないようなのだ。

 だけど、それにしてはケンカ腰ながらも二人で話していることも多いし、どうしてだろう――。

 どうやって二人をおさめたらいいのかわからなくて困っていたら、今日も渋い着物に身を包んだハナコさんがそっと耳打ちした。

「ほっときなさい。あれで結構お互い楽しんでんのよ」

「似たもの同士は反発しあうって言うじゃない? それよそれ」

 続いてタバコをもみ消した香織さんにまで笑われて、咲ちゃんと私は顔を見合わせる。

 何やら納得しているらしい咲ちゃんとは違って、どういう意味なのかよく理解できない。

 助けを求めた先で、一人沈黙を守っていた静さんがぽつりと呟いた。

「――どうでもいいが、ケンカなら外でやってくれ。鬱陶しくて仕事が進まん」

 厳しく眉間に皺を寄せたまま、茶室を出て行った背中はどこかいつもと違う不機嫌さをかもし出していて、声をかけそびれる。

 静かに言われたことで、ぎゃあぎゃあわめいていた優月ちゃんと亀元さんも勢いをそがれたように黙ってしまった。

「うわー静のやつ、本気で不機嫌みたいね。とばっちり食う前に、とっとと出勤しよーっと」

 きらきら光る腕時計を見やってから、肩をすくめて香織さんが立ち上がる。

「あらあら、もうこんな時間? いやだ、あたしも急がなきゃー」

「あっ、待ってよハナコさん! 俺も行くから」

 そそくさとハナコさんと亀元さんまで帰り支度を始めて、残された私も一緒に行きかけた瞬間、咲ちゃんがこそっと手招きした。
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