抹茶な風に誘われて。
「なんだよこれ。ちっせえし、肉も薄いなー。こんなんで五百円も取るのかよ」

「アメリカではもっと大きいの?」

「ああ。コーラだってSでも日本のLくらいのサイズはあるな。それぐらいじゃないとデカイアメリカ人の腹は満足しねえからさ。まあ、だから太るってのもあるわけだけど。ジャンクフードだ自然破壊だって騒ぐヤツラもいるけど、俺はある程度エクササイズで保ってれば多少ジャンク食った程度じゃ人間どうにかなったりしねえって思ってる」

「へえ……そうなんだ」

 相槌を打ちながら、止まっていた私の手に気づいたアキラくんが言葉を止める。

 頭をぽりぽり掻いて、氷が溶けかけているコーラに目をやった。

「あれ、もしかしてかをるファーストフードとか苦手だった? あんまり食べてないな」

「あ、う、ううん――えっと、ちょっと食欲なくて。よかったらアキラくん、もっと食べて?」

 ポテトの袋をアキラくんのトレイに載せたら、困ったような目が返ってきた。

「そっか? じゃあ遠慮なく」

 本当は脂っこいものもこういうファーストフードも好きじゃない。

 一番はあっさりした和食に、できれば抹茶と甘い和菓子――そんなことを思いながら、自然と浮かんでくる面影につい俯きがちになる。

 沈んだ気持ちに気づかれないように、私は笑顔を浮かべた。

「ところで、おじさんは元気? 突然お手紙いただいて、とっても嬉しかったけど驚いたなあ……それに、アキラくんまで交換留学してくるなんて全部びっくりすることばっかりだったよ」

「はは、そうだろ。びっくりさせるつもりで内緒で準備したんだから、当然だよ」

「内緒で、準備……」
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