抹茶な風に誘われて。

Ep.6 誤解

 かをると連絡を断ってから、既に二週間。

 携帯を開いては浮かぶ面影にまだ迷う自分がいる。

 あの日、逃げるように家を飛び出したかをるを追えなかったのは、明らかな自己嫌悪のためだった。

 三十にもなって、十七の少女を――何も知らない純粋な彼女の怯えを取り払うことも、待つこともできなかった自分への。

「馬鹿が……」

 呟くのは、自分への戒めの言葉だ。

 手に入れたくて、あの透明な瞳も、やわらかな唇も、華奢な体も何もかも――全て誰にも渡すまいとして、今まで守ってきた一線を超えかけた。

 あんな子供の挑発にまんまと乗ってしまったことよりも、かをるを泣かせてしまったことが腹立たしくてたまらなかった。

 いつの間に、こんなにも彼女が自分の中で重要な位置を占めていたのだろう。

 今まで知らなかったはずの、執着という二文字。

 二週間も顔はおろか、声さえも聞いてない日々の中で、まだあきらめきれていない自分がいる――。

 ため息と共に茶道具を片付けていたら、玄関のチャイムが鳴った。

 連打するのももどかしかったのか、乱暴に扉を開け放ち、入ってきた人物のダミ声に眉をひそめる。

「静ちゃんったら、いるんなら電話に出なさいよねっ! いくらかけても出ないから、何かあったのかと思って心配しちゃったじゃないの」

 昼間の仕事着である地味なスーツに身を包んだハナコは、それでも普段通りの女言葉で言い放った。
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