抹茶な風に誘われて。
 この事実を片手にかをるを強引に連れてきたのか。

 それとも彼女が望んで付いてきたのか。どちらでもいい。

 京都という地へ来たからには、自分の過去も無関係ではなくなることも予想済みだ。

 いつか話すつもりではいたのだから、その日が早まっただけのこと。

 いい機会だ、と思った。

 こんな自分を本気で愛してくれるのか――かをるが心を決めるために、そして、どんな結果になろうとも、自分がそれを受け入れるために。

 ただ、彼女を傷つける存在だけは許せない。

 特に、優しい笑顔の裏に刃を隠しているような奴は。

 片手を上げてタクシーを呼びながら、からりと晴れた秋晴れの日差しに目を細めた。

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