抹茶な風に誘われて。
「お前らしいと言えば聞こえはいいが、もっと自分を主張することを覚えたほうがいい。そうじゃないと、俺は甘やかされて図に乗るかもしれないぞ?」

「主張、って言われても……」

「ほら、ものは試しだ。怒ってみろ、遠慮せず思いきり言ってもいい」

「そんなの無理です……っ」

「駄目だ、それじゃあ俺の気が済まん。何でもいいから胸にたまってる言葉を吐き出してみろ。さあ」

 笑いを瞳に残したまま穏やかに見つめられて、抵抗し続けることができなくなった。

 遠くで聞こえる船の汽笛を合図に、再び急かされた私は渋々口を開いた。

「ほ、本当にいいんですか?」

「もちろん。なじられたほうがスッキリするね」

「わかりました……えっと、じゃあ……ど、どうして電話くれなかったんですかっ」

 俯いたまま胸元で両手を握り締めて、精一杯言ってみたのに――静さんは私の顎をくいっと持ち上げて、意地悪な微笑を浮かべる。

「なじる相手はよく見ておくものだ」

 あっという間に血が上る頬を押さえて、ドキドキする心臓を無視して首を振った。

「はいっ。え、と――どうして会いに来てくれなかったんですかっ」

「電話もしたし、会いにも行った。なのに、姿を見せなかったのはお前だろう?」

 責められているはずなのに、なぜかグレーの瞳は楽しげな光を浮かべている。

 どうしてだろうと思いながらも、図星をつかれて余計に言葉に迷った。
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