抹茶な風に誘われて。

Ep.4 花

 花が好きなんだ、優しい子だね――。

 そう言ってあの人は笑った。

 いつも一人で過ごす場所だった花壇で、頭を撫でてもらえた。

 だから私は頑張ったんだ。

 ただ見ていただけの花を、ちゃんと世話するようになったのはその日から。

 そうやって頑張っていれば、きっと認めてもらえると思った。

 気に入ってもらえる、連れて行ってもらえる――そう信じてた。

 だけどそれはただの私の幻想で、幼い子供の世間知らずな願いでしかなかった。

 ごめんね、かをるちゃん。

 ごめんね……。

 そう繰り返した顔は、静かに笑っていて。

 その日からしばらく、私は花壇に通わなくなった。


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