抹茶な風に誘われて。
 そう、ここ韓国では日本語を勉強した人も多いから用心しなくてはいけないのだ。

 私まで真っ赤になりながら、つい振り向いてしまうけれど――遠い席に女の子たちと座ったアキラくんは、こちらの話も全く聞こえていないようだった。

 ――本当に、もうあきらめてくれたのかな?

 絶対に連れて行くとか張り切って言われて、内心すごく不安になっていた私はほっと息をつく。

 このまま何もなく、修学旅行は過ぎていくのだと安心したその頃、まさに彼が計画を練っていたなんて夢にも思っていなかったのだ。

 

 そしてやってきたその日の夜、早めの夕食を終えた私たちは宿泊場所であるコテージへ案内されていた。

 遠方のツアーを選んだ班は、そのまま泊まって翌日の自由行動に合流することに決められていたのだ。

 島の中にいくつも建っているコテージは色々な種類があって、落ち着いた色合いのものから白や黄色、更にはピンク色に塗られた可愛らしいものまでと豊富だ。

 ピンク色のコテージに当たったことで、優月ちゃんも咲ちゃんも嬉しそうに写真を撮る。

 もともと撮られるほうは苦手な私は、もっぱら撮影係に回っていた。

「せっかくだからタイマーで撮ろうよ。ほらっ、かをるちゃんも!」

 手招きされて断りきれなくて、仕方なく一緒に写る。

 笑顔が引きつりそうになったのを、優月ちゃんが耳元に囁いた言葉で余計顔が固まった。

「こういうロマンチックなコテージなら、静先生との初体験もスムーズに行くかもしれないのにねー」

「ちょっ、ちょっと優月ちゃんっ……!」

 赤くなる頬を押さえる私をかばってくれた咲ちゃんも、少しいたずらっぽく笑いながら窓の外を見渡した。
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