抹茶な風に誘われて。
 だけどそのうち気づいたんだ。

 私はただ、あの人が大好きだったんだって。

 連れて行ってくれなかったことも悲しかったけど、それよりもっと辛かったのは、突然会えなくなってしまったことだったんだって――。

 かなり後になってから、会社のために男の子を養子にするか、それとも気に入っている私をもらうか、おじさんはずっと迷っていたんだと先生がこっそり教えてくれた。

 そう聞いてからやっとわかったんだ、あの時の『ごめんね』の意味を――。

 おじさんは私を連れて行けなかったことを、悲しんでくれていたんだって。

 それがわかってからやっと、私はおじさんを許せるようになった。

 誰も人を傷つけたくて傷つける人なんていない。

 不幸な出来事が重なって、そうなってしまっただけなんだって――。

 私はそう思うようになった。

 自分を置いていった両親のことも、やむを得ない事情があっただけなんだって信じてる。

 それだけは施設の先生は教えてくれなかったけど、あの手紙があったから。

 私は望まれて生まれてきた子なんだって、自分で自分を祝福してあげることにした。

 そうじゃないと悲しすぎるから。

 人は皆、誰も心の底から悪い人なんていないのだと思うのだ。

 そうすれば世界は優しく、光り輝いているから。

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