抹茶な風に誘われて。
「――お目覚めか? 無用心なお姫様」

 笑いを含んだその声が、アキラくんのものだと気づいた時にはもうすぐそばに立たれていて。

 息を呑んだ私の両脇に手をついて、ベッドに乗られていた。

「あ……アキラくん? びっくりした……!」

 衝撃で覚醒した私は、急に明るくなった視界に目を細める。

 アキラくんがベッドサイドのスタンドを付けたのだとわかったけれど、突然の状況をまだ把握できていなかった。

「そんな格好で寝てちゃ、風邪ひくぞ?」

 言われてやっと、自分が薄手のワンピース一枚だということも思い出す。

 二人を見送ってから、脱いだ上着は窓際の椅子にかけられたままだ。

「あ、そ、そうだよね。ありがとう――でもどうしたの? 急に……」

 スタンドを付けた後にベッドから離れたアキラくんは、無言で笑みだけ返して、開いたままの窓を閉めている。

 自然に扉に鍵をかける背中を見ていた私は、やっと何か様子がおかしいことに気づいた。

「あ、あの……アキラくん。今何時? キャンプファイヤーは?」

「……中止になったって聞かなかったか? ほら、みんな撮影見学で」

 やっと普通に返ってきた言葉でほっとする。そうか、撮影――。

 だから辺りは静かなままで、誰もいないのか、と納得してから、首を傾げる。

「アキラくんは撮影見に行かなかったの?」

「いいや」

 自分と同じように興味などカケラもないという顔で、アキラくんが答えた。

 閉じた扉にもたれて、ジーンズのポケットに両手を突っ込んでにやりと笑っている。

 どこか不敵な微笑にも見えて、なぜか怖く感じた。

 ベッドから降りて、上着を取りに行こうと思ったけれど、ちょうど歩み寄ってきたアキラくんが正面に立って、足を止めた。
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