抹茶な風に誘われて。
「あっはははは……マジかよ、すっげー。いくらなんでも信じらんねえ。自分を強姦しようとした奴まで、お前は許すって言うのか? どんだけ聖人君子なんだっつー話だよな」

 腹を折って、身をよじりながらさもおかしそうに笑い続ける。

 楽しそうな声音とは裏腹に、瞳は全く笑っていなかった。

「そんだけ清純可憐な『かをるちゃん』だからオヤジも迷ったんだよなあ。いっそのこと、俺みたいな落ちこぼれじゃなく、本気でお前を養子にしとけばよかったんだ。今時、跡取りも何も、女社長だっていくらだっているんだ――」

「何を言ってるの……?」

 蒼白な顔で、それでも真正面から男に問いかける。

 そんなかをるを守るように、背後に立った。

「言葉の通りさ。オヤジはずっと後悔してたんだよ、俺を選んだことをな。ことあるごとにお前の写真を見ては、ため息ついてた。思ってたんだろうよ、なんでこんな奴養子にしたんだろうって」

「そんな――」

 眉を寄せ、ただ首を振る。

 無垢なかをるの顔を苛立ちもあらわに睨み付けた男は、ため息混じりにベッドに腰掛けてみせた。

「なのにいつまでたっても俺を見捨てやしねえ。だから、こっちから思わせてやろうと思ったんだ。白井グループの次期社長になんて、絶対させるわけにはいかないってな」

 吐き捨てるように言って、乾いた笑い声を出す。

 力ないその横顔は、単なるガキのものでしかなかった。

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