抹茶な風に誘われて。
Ep.12 真相
父親に連れて行かれる白井アキラの背中に、かをるは最後にはっきりと言った。
「私は、聖人君子じゃない。アキラくんが今日したことだけは――絶対に許さないから」
引き裂かれたワンピースの胸元を上着で隠して、伝えられた言葉。
振り返った白井アキラを見つめるのは、俺でさえも驚くほどに凛とした瞳だった。
怒りや屈辱というよりも、ただ静かな意思。
逸らされた視線を追うことはせず、かをるはもう一度口を開いた。
「だから……ちゃんと反省してほしい。そして、負けないで――自分の心に」
透明な矢のようにまっすぐに投げかけられた言葉を、奴がどう聞いたのか。
再び歩き出した白井アキラは、一言も発することはなかった。
静かになったコテージに、また賑わいが戻ってきたのはそれから三十分ほどしてからのことだった。
「あれーっ? 静先生! えー嘘っ! なんでいるのー!?」
撮影見学とやらの帰りで、もともと興奮していたらしい優月が余計にうるさい声を上げる。
「……ちょっと旅行に来ただけだ」
渋々答えたら、興味津々といった顔で着物姿を眺め回した。
「旅行って、こんな着物で? っていうか本当はかをるちゃんが心配で来たんじゃ――」
「はいはい、優月っ! そこまで! すみません、邪魔ですよねっ。あたしたち友達のコテージに行ってましょうか?」
「はっ、そうだよね。あたしらならどこでも寝れるからさ、かをるちゃん気にせず朝まで静先生とゆっくり――」
「ちょっ、ちょっと二人とも!」
あせるかをると騒がしい残り二名に、俺は苦笑する。
さすがの俺も、修学旅行の夜を邪魔するような無粋な真似ができるわけがなかった。
「私は、聖人君子じゃない。アキラくんが今日したことだけは――絶対に許さないから」
引き裂かれたワンピースの胸元を上着で隠して、伝えられた言葉。
振り返った白井アキラを見つめるのは、俺でさえも驚くほどに凛とした瞳だった。
怒りや屈辱というよりも、ただ静かな意思。
逸らされた視線を追うことはせず、かをるはもう一度口を開いた。
「だから……ちゃんと反省してほしい。そして、負けないで――自分の心に」
透明な矢のようにまっすぐに投げかけられた言葉を、奴がどう聞いたのか。
再び歩き出した白井アキラは、一言も発することはなかった。
静かになったコテージに、また賑わいが戻ってきたのはそれから三十分ほどしてからのことだった。
「あれーっ? 静先生! えー嘘っ! なんでいるのー!?」
撮影見学とやらの帰りで、もともと興奮していたらしい優月が余計にうるさい声を上げる。
「……ちょっと旅行に来ただけだ」
渋々答えたら、興味津々といった顔で着物姿を眺め回した。
「旅行って、こんな着物で? っていうか本当はかをるちゃんが心配で来たんじゃ――」
「はいはい、優月っ! そこまで! すみません、邪魔ですよねっ。あたしたち友達のコテージに行ってましょうか?」
「はっ、そうだよね。あたしらならどこでも寝れるからさ、かをるちゃん気にせず朝まで静先生とゆっくり――」
「ちょっ、ちょっと二人とも!」
あせるかをると騒がしい残り二名に、俺は苦笑する。
さすがの俺も、修学旅行の夜を邪魔するような無粋な真似ができるわけがなかった。