抹茶な風に誘われて。
 パジャマで脱衣所の外に出たら、ちょうど冷蔵庫から冷たい麦茶を出した葉子さんがウインクした。

「飲む?」

「あ、はい……」

 差し出してくれたお茶を飲むと、少し気分が落ち着いてくる。

 ただの配達、そう配達に行くだけ――何もドキドキしたりすることなんかないんだ。

 いつもお手伝いしていることと同じ。お花を渡したら、帰って来るだけなんだから。

「ねえ、かをるちゃん――日曜日、もしも配達だけじゃすまないようなら、遅くなってもかまわないからね?」

 肩をポンと叩きながらそう言われて、私はきょとんとした。

「配達だけじゃすまない時って……一体どういう時ですか?」

 そう訊ねた途端、葉子さんも一瞬唖然として、それからすごく楽しげに笑った。

「こういうとこがかをるちゃんらしいとこよね~! まったく今時の女子高生とは思えない。でも好きよ、可愛くて!」

 頭を子供のように撫でられて、なんだか気恥ずかしくなる。

「あの、葉子さん……?」

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