抹茶な風に誘われて。
「だからあ、もしもデートに誘われたりとか、なんならお泊りとかになっちゃっても、うちはかまわないわよってこと!」

 肩を叩かれて、私は思わずお茶を吹き出しそうになった。

「よっ、葉子さんったら! 何言ってるんですかっ! そ、そんなことあるわけないじゃないですか!」

 真っ赤になって叫んだら、葉子さんが大声で笑う。

「あーら、そんなのどうかわからないわよ? だって相手はハーフっぽい素敵な美形でしょう? 誘われちゃうかもよ~? 大丈夫、愛があれば見た目とか、年の差とか、そんなのどうでもよくなっちゃうんだから!」

「……だから、そんなんじゃないって言ってるじゃないですかー!」

 ついに大声でそう叫んだら、おじさんまでやってきて楽しそうに笑われてしまった。

「おっ、おやすみなさい!」

 これ以上からかわれないように、とふくれながら背を向ける。

「……本当に、娘みたいに思ってるんだからね」

 自分の部屋のドアを開ける前にかけられた声。

 振り向いたら、葉子さんがさっきまでの楽しそうな顔とは違う、優しい微笑を浮かべていた。

「だから何でも相談して? 困った時は、あたしが一肌脱ぐからね!」

 いたずらっぽく力こぶを作ってそう言われて、私は一瞬まばたきをして、ゆっくりと笑顔になった。

「ありがとう、葉子さん、おじさん――」

 優しい二人にお辞儀して、私は今度こそおやすみなさいを言った。
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