抹茶な風に誘われて。
海にもプールにも最適なほど晴れた日曜日の午後、私はグリーンのエプロンをつけて、自転車に乗っていた。
「かをるちゃん、ご苦労様―!」
「いいえ、こちらこそいつもありがとうございます。これ、今週のお花です」
迎えてくれた雑貨屋の奥さんに差し出したのは、アレンジメントされたお花。四角型のバスケットを嬉しそうに受け取って、奥さんは鮮やかな黄色の花びらにそっと触れた。
「まあ、ひまわり。やっぱり夏らしくていいわねえ。チョコフレークが入ってるのが、さすが葉子さんのアレンジだわ」
「ええ、華やか過ぎないように、ちょっと大人な雰囲気も生かしたほうがお店に似合うからって仰ってました」
花びらにチョコレート色が混ざったひまわりの名前なんだって、今朝教えてくれた葉子さんの言葉を思い出しながら、説明する私。
シックな色合いのインテリアを見渡しながら、奥さんはバスケットをレジの横に置いてくれた。
「ありがとう。今度来てくれたらまた割引するからって、葉子さんに言っといて」
「はい。じゃあ、失礼します」
頭を下げて自転車にまたがった私は、次の配達場所へ向かう。
商店街のなじみの店だけじゃなく、『フラワー藤田』ならではのお得意様だ。
アーケードを通り過ぎ、少しそれた住宅街の中で自転車を止めると、古びた一軒家の前で植木に水遣りをしている腰の曲がったおばあさんがいた。
「こんにちは、佐々木さん。お花の配達ですよ」
声をかけると、ゆっくりと足をひきずりながら門を開けてくれる。
「あらかをるちゃん、いつもすまないわねえ」
恐縮してくださるおばあちゃんに首を振ると、自転車のカゴからお仏壇用の花を取り出して、そっと手渡した。
「まあ、ユリも入れてくださったの……いつものお値段しか用意してないのよ。どうしましょう」
驚いたようにそう言うおばあちゃんに、私は手を振る。
「あ、いいんです。ユリはサービスだって葉子さんが。今日、おじいさんの月命日ですよね?」
「よく覚えていてくださって……本当にありがとう。葉子さんにもよろしくお伝えくださいね」
いつまでも手を振ってくれるおばあちゃんにお辞儀して、私はまた自転車を漕ぎ出す。
「かをるちゃん、ご苦労様―!」
「いいえ、こちらこそいつもありがとうございます。これ、今週のお花です」
迎えてくれた雑貨屋の奥さんに差し出したのは、アレンジメントされたお花。四角型のバスケットを嬉しそうに受け取って、奥さんは鮮やかな黄色の花びらにそっと触れた。
「まあ、ひまわり。やっぱり夏らしくていいわねえ。チョコフレークが入ってるのが、さすが葉子さんのアレンジだわ」
「ええ、華やか過ぎないように、ちょっと大人な雰囲気も生かしたほうがお店に似合うからって仰ってました」
花びらにチョコレート色が混ざったひまわりの名前なんだって、今朝教えてくれた葉子さんの言葉を思い出しながら、説明する私。
シックな色合いのインテリアを見渡しながら、奥さんはバスケットをレジの横に置いてくれた。
「ありがとう。今度来てくれたらまた割引するからって、葉子さんに言っといて」
「はい。じゃあ、失礼します」
頭を下げて自転車にまたがった私は、次の配達場所へ向かう。
商店街のなじみの店だけじゃなく、『フラワー藤田』ならではのお得意様だ。
アーケードを通り過ぎ、少しそれた住宅街の中で自転車を止めると、古びた一軒家の前で植木に水遣りをしている腰の曲がったおばあさんがいた。
「こんにちは、佐々木さん。お花の配達ですよ」
声をかけると、ゆっくりと足をひきずりながら門を開けてくれる。
「あらかをるちゃん、いつもすまないわねえ」
恐縮してくださるおばあちゃんに首を振ると、自転車のカゴからお仏壇用の花を取り出して、そっと手渡した。
「まあ、ユリも入れてくださったの……いつものお値段しか用意してないのよ。どうしましょう」
驚いたようにそう言うおばあちゃんに、私は手を振る。
「あ、いいんです。ユリはサービスだって葉子さんが。今日、おじいさんの月命日ですよね?」
「よく覚えていてくださって……本当にありがとう。葉子さんにもよろしくお伝えくださいね」
いつまでも手を振ってくれるおばあちゃんにお辞儀して、私はまた自転車を漕ぎ出す。