抹茶な風に誘われて。
ムーンリバー、と書かれたドアを亀元さんが開けて、さあどうぞ、と片手で中を指し示す。
思ったよりも広めの店内が見渡せて、きらきらした明るい照明に後押しされた私は、ついに足を踏み入れてしまう。
「ようこそ、ムーンリバーへ」
冗談めかしてお辞儀してくれた亀元さんは、後ろから私の肩を支えて、右に向きを変えさせる。
そのまま見やった壁には、大きな額に飾られた男の人の顔写真がたくさん並んでいた。
ナンバーワン、ナンバーツー、という風に番号が振られ、更には写真の下に名前が書かれている。
「ほら、これが俺」
嬉しそうに指差された先には確かに亀元さんの写真が一番下に飾られていた。
先ほど言っていた通りに、『ヒカル』という名前が書かれ、今着ているようなスーツと同じ髪型で映っている。
「客はこの中から指名ホストを選ぶってわけ。どう? 俺、指名してみない? なんつってー」
戸惑っていると、亀元さんは笑ってソファに私を座らせる。
ちょうどカウンターの奥から他のスタッフらしき黒い服を着た人たちが出てきて、驚いたように私を見た。
「おいおい、ヒカル。何やってんの? 未成年連れ込んじゃまずいだろー」
「わっ、かーわいい! 高校生? まさか中学生じゃねえよな」
気安い口調で訊ねられた亀元さんは、「はっはっは、いいだろー俺の彼女だ!」なんて胸を張って言ったけれど、誰も信じた様子もなく大笑いされ、すねている。
「あ、なんだ。お花屋さん? バイトかな? ご苦労さん」
すぐにグリーンのエプロンを見つけてくれた人が笑ってくれて、私は立ち上がってお辞儀をした。
「どうぞーオレンジジュースだけど。飲んでって!」
「はい、これも食べてって」
差し出された冷たいグラスとお菓子のお皿を受け取って、お礼を言う私の横で、亀元さんが悔しそうにソファに座る。
「なんだよー俺がやろうと思ったのに! くっそーみんなして先取りしやがって」
思わずおかしくて笑ったら、亀元さんが嬉しそうに私を見た。
思ったよりも広めの店内が見渡せて、きらきらした明るい照明に後押しされた私は、ついに足を踏み入れてしまう。
「ようこそ、ムーンリバーへ」
冗談めかしてお辞儀してくれた亀元さんは、後ろから私の肩を支えて、右に向きを変えさせる。
そのまま見やった壁には、大きな額に飾られた男の人の顔写真がたくさん並んでいた。
ナンバーワン、ナンバーツー、という風に番号が振られ、更には写真の下に名前が書かれている。
「ほら、これが俺」
嬉しそうに指差された先には確かに亀元さんの写真が一番下に飾られていた。
先ほど言っていた通りに、『ヒカル』という名前が書かれ、今着ているようなスーツと同じ髪型で映っている。
「客はこの中から指名ホストを選ぶってわけ。どう? 俺、指名してみない? なんつってー」
戸惑っていると、亀元さんは笑ってソファに私を座らせる。
ちょうどカウンターの奥から他のスタッフらしき黒い服を着た人たちが出てきて、驚いたように私を見た。
「おいおい、ヒカル。何やってんの? 未成年連れ込んじゃまずいだろー」
「わっ、かーわいい! 高校生? まさか中学生じゃねえよな」
気安い口調で訊ねられた亀元さんは、「はっはっは、いいだろー俺の彼女だ!」なんて胸を張って言ったけれど、誰も信じた様子もなく大笑いされ、すねている。
「あ、なんだ。お花屋さん? バイトかな? ご苦労さん」
すぐにグリーンのエプロンを見つけてくれた人が笑ってくれて、私は立ち上がってお辞儀をした。
「どうぞーオレンジジュースだけど。飲んでって!」
「はい、これも食べてって」
差し出された冷たいグラスとお菓子のお皿を受け取って、お礼を言う私の横で、亀元さんが悔しそうにソファに座る。
「なんだよー俺がやろうと思ったのに! くっそーみんなして先取りしやがって」
思わずおかしくて笑ったら、亀元さんが嬉しそうに私を見た。