抹茶な風に誘われて。
「そんなわけないでしょーが! お水なあたしとこの子と接点なんかありそうに見える? さっき会ったのよ、家の前で。なんか迷ってるみたいにうろうろしてたから、本気で迷子かと思ったわ。それにしてもこんな透明純情な女子高生と静が知り合いなんて世の中意外な驚きに満ち溢れてるもんよね。ネオンサインぎらぎらな夜の住人たちの集いに呼んじゃったりしてさ、大丈夫なわけー? 毒気にあてられたみたいな顔してるわよ、既に」

 いつものようにペラペラと喋り捲る香織と、へらへらと笑う駄目元、そしてまるで娘を見るかのようなにこにこ顔のハナコを順番にまんまるい目で眺めていたかをるは、はっとしたように両頬に手を当てた。

「あ、あの、そんなことないです。お招き――本当に嬉しかったです。私はただ……今までお会いしたことないような方ばかりで、なんだかびっくりしちゃって」

 裏のない純粋な驚きをそのまま瞳に示して、微笑む。

「かをるちゃん……いやじゃないの? ホストとかオカマとかホステスとか、そんなんばっかりだけど」

 さすがに気が咎めるらしく、頭をかいて訊ねた駄目元にも、かをるは首を左右に振った。

「いいえ。ホストっていう職業が、大体どんなことをするのか、お友達にも聞きました。バイトしてる花屋の店長さんにも、本当は気をつけなさいって言われました。でも私には、皆さんが悪い人のようには見えませんし、それに――どんなお仕事だって、誇りを持って頑張っていればそれでいいんだって思うんです」

 教科書のお手本のような答えだと、そう思った。

 単なる社交辞令なら聞きたくもないような――けれど、少なくともこの目の前の少女は本気で言っている。

 それぐらい目を見ればわかる。

 ちくりと針が刺さったような感触は、また俺の屈折した反発心なのか――。

 そんな俺には気づかず、駄目元とハナコは手を取り合って、感動したように頷いていた。

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