抹茶な風に誘われて。
「かをるちゃんっ! いいこと言うわー! 今時そんなこと言ってくれる子がいるなんて、アタシ、感激!」

「ほんっとだねーハナコさん! 俺、ホストやっててそんなこと言われたの初めてだもん!」

「バッカみたい。いくらいいこと言ってくれたってさー世間の皆がそう思ってないことくらい、わかってるでしょーが」

 単純な二人を背後から腕組みした香織が嘲笑うが、その口調は内容ほど気を悪くしたものではなかった。

「――とにかく、そろそろ始めるぞ」

 そう、茶事という名の品評会を――。

 もてなしの心、という茶道においての醍醐味など完全に脇へよけて、俺は始めることにしたんだ。

 無垢そのものの、ガラス細工のような彼女の心は、汚れを嫌い、俺を拒否するのか、それとも受け入れるのかのテストを。

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