抹茶な風に誘われて。
「じゃあ今度は俺の番だな。君にも質問するから、答えてくれ」

 次の瞬間にはその色は深くしまい込まれて、またいつもの皮肉めいた視線が振ってくる。

 私には拒否する意思もなかったから、ただ頷いた。

「君はどうしてこの茶会に来た? 俺自身に興味でもあるのか、それとも元ホストのハーフ男が物珍しかったのか?」

 まっすぐに切り込まれたことで、私は言葉を失う。

 まさかそんな風に聞かれるなんて思いもよらなかったからだ。

 静さんの言葉で、ハナコさんも亀元さんもおどおどして、今度は香織さんまで私がどう答えるのかまじまじと見つめている。

「あの――私、本当はわからないんです……」

 何をだ、とでも言うかのように静さんの滑らかな眉が上がる。

 怒らせたくないけど、正直に言うしかなかったから――私はどぎまぎしながら言葉を続けた。

「どうして、って聞かれたら――ただ……会いたかったのかもしれません。静さんのことが気になって――もっと知りたくて、ただそれだけで――来て、しまいました」

 思ったまま、感じたままを口に出したら、なぜか顔が熱くなる。

 きっと真っ赤になってるのだろう自分の頬を押さえながら、俯いた私の前で、静さんはただ黙っていた。

 ヒュウ、と香織さんが吹いた口笛の音が聞こえる。

「ちょっとーこれって超純粋な告白じゃない? 静、さすがのあんたも真っ白な恋心には皮肉も出ないでしょう」

 ――恋、心。

 香織さんのからかうような言葉の中で、じわり、と心に入り込んできた単語。

 嘘だ。

 そんな。

 まさか。

 ――わからない。

 私には何もわからない。

 自分がどう感じているのか、静さんをどう思っているのか。

 でも間違いないのは、心臓が今までにないくらい高鳴っていることだった。
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