抹茶な風に誘われて。
「――へえ」

 かなり経ってから返されたのは、ただその一言だけ。

 おそるおそる目線をあげたら、面食らったような顔の静さんがこちらを見ている。

 さっきまでの意地悪じみた表情は消えうせ、ただ呆然としているように見えた。

「静ちゃん、固まってるわよっ! ちょっと大丈夫? 百戦錬磨の元ナンバーワンホストを黙らせるなんて、かをるちゃんやるじゃないの!」

「えーマジでえー!? っていうか静もマジってこと!? うわーどうする、どうする! 超年の差カップル誕生―!」

 大騒ぎをするハナコさんと亀元さんの声も、私の耳を通り過ぎていく。

 ――だって、私はまだどうすればいいかわからないんだもの。

 この胸で生まれたばかりの、雛のような感情を。

「静かにしろ。あんまりストレートで、その――ちょっと面食らっただけだ」

 三人にそう言った静さんの頬は、心なしかほんの少し赤い気がする。

「彼女は俺のことを知りたかったから、会いたかったと言っただけで――別にそれがイコール恋だってことにはならんだろうが」

 扇子で自分の顔をあおぎながら呟く静さん。

 その言葉に、私はなぜか口を開いていた。

「あの――いけませんか……?」

「あ?」

 しかめ面をして返された声に、私は深呼吸してもう一度。

「会いたいから――知りたいから、会いに来たらいけませんか? 静さんに――恋、したらいけませんか?」

 するりと滑り出た言葉に、私自身が驚いていた。

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