抹茶な風に誘われて。
「なんだよー面白くねえ。さすがの静もただの大人だってことかよー。ホスト時代の栄光はどうしたんだよ。いいじゃん今時、年の差カップルなんてざらにいるし」

 かをるを見送って、さっさと麻の着物――どうでもいいが既に足もとが皺くちゃになっている――を脱いだ駄目元がふくれた。

「ばっかねえ、いくら年の差ってったって、未成年はやばいわよー未成年は。淫行法で引っ張られちゃうんだから。まっ、ばれなきゃ問題ナッシングだけどねっ」

 きゃは、と不気味な声で笑ったハナコの死語に眉を寄せ、香織までもがタバコ片手に参加する。

「まー静はどっちかっつーと、年上キラーだったからねー。未亡人とか人妻とか、そっち系のがお得意でしょ。若い子でも言い寄ってくるのは相手してたけど、それでも客としてしか見てなかったしねー」

 俺の過去を知るメンバーの好き勝手なお喋りを無視して、俺は茶道具を片付けていた。

 駄目元の勝手な招待だったとはいえ、こうやって再会したことはいい機会だったのかもしれない。

 俺に『お遊び』の潮時だと教えてくれる機会――。

「それにしてもさあ、あんな純粋な子、本気にさせたらやばいよ? 静。あんたもその気ならどーこー言わないけど、下手すりゃ親とか学校まで乗り込んでくるかも」

 紫煙を庭に向かって吐き出していた香織が、けらけらと笑う。

 その目が笑っていないことは、すぐにわかった。

「あっ、親なら心配ないと思うよ。千手堂のおばちゃんが言ってたけどさー、かをるちゃん、施設育ちで両親も兄弟もいないんだって。だからあそこの花屋で住み込みバイトしてるらしいよ」

「まあ、かわいそうに。だからあんたになんか惹かれるもんがあるのかもねえ。やっぱ美少女ってのは薄幸って決まってんのね」

 ハナコのどうでもいいコメントはさておき、駄目元のもらした一言に俺は手を止めた。
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