抹茶な風に誘われて。
 ――施設育ち。

 そうか、なるほど、と思った。

 でも次の瞬間、余計な反発心が浮かび上がる。

 親もいない、家族もいない。

 なのにあの透明さはなんだ。

 どんな不幸にもめげず、健気に生きています、とでも?

 我ながら屈折しているとは思う。

 けれど少女に同情するよりも先に、俺は冷たい声を出していた。

「俺には関係ないな。どっちみち――もう会うこともないだろうさ」

 その言葉がすぐに覆されることになることを、この時は疑いもしなかった。



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