抹茶な風に誘われて。
「かをるちゃん、起きてて大丈夫なの?」

 部屋に入ってきた葉子さんが、驚いたように訊ねた。その手にはおかゆと水の載ったお盆。

 薬と一緒に持ってきてくれた昼食を机に置いて、着替え終わった私に駆け寄ってくる。

「熱が下がったからって、まだ無理しちゃだめよー! 五日も寝込んでたんだから、ゆっくり体力を回復させなきゃ。ほら、座って!」

 半そでのブラウスとスカート、そしてお店のエプロンまできっちり身につけた私を強引に椅子に座らせて、葉子さんが顔をしかめる。

「もう大丈夫です、葉子さん。ご迷惑おかけしてしまって、ごめんなさい。あんまり寝てたら体がなまってしまいますから」

「馬鹿ねえ、迷惑だなんてひとっかけらも思ってないから、そういう水臭いことは言わないの! 本当に心配してるだけなんだから……だって、かをるちゃんが風邪だなんて珍しいし、それにこの前帰ってきてからもずーっと元気なくて、心ここにあらずって感じだったしね。さっ、そろそろ白状してもらうわよ。やっぱりあのハンサムホストくんと何かあったんでしょう」

 腕組みをして軽く睨みつけるふりをする葉子さんに、言葉が出てこない。だってまさに図星だったから、余計にどう答えたらいいかわからないのだ。

「やっぱりねえ――ちょっと脅しといてよかったわ。かをるちゃんを傷つけた罰よ」

「え、脅し……?」

「そう。うふふん、黙ってようかと思ったんだけどね――彼、昨夜店に来たのよ」

「えっ? 静さんがここに?」

 意外な言葉で見上げた私の肩に手を置いて、葉子さんが嬉しそうに頷く。

「あのお茶会の後から見るからにかをるちゃん元気なかったし、それからすぐ風邪引いて寝込んじゃったでしょう。だからあたし結構怒ってたの。それで、彼が来た瞬間、とっちめてやろうかと思ったのよ」

「と、とっちめてって――」

 あわてる私に、葉子さんはふふと笑って片手を振る。

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