抹茶な風に誘われて。
 あの時の問いに対する答えは、まだ出ていない。

 いや、出していないというべきか。

 恋をしてもいいのか――そんなこと、あらかじめ決めておくべきことでもないからだ。

 いいも悪いも存在しない。選ぶ余地もない。気づけばもう始まっているもの――。

 それが恋というべきものだし、少なくともそれぐらいのことは俺にはわかっている。

 本格的に入れ込めば、ややこしいことになるのも知っている。

 けれど、トラブルを避けてまで守るものなんて、俺には何もない。

 逃げるのは、人生で一度で十分だ。

 自分の足で立って生きているという実感、それを手にしてからもずっと、心の中にあるわだかまり。忘れられない重荷。

 そんなものに苦しめられるのはもう嫌だ。

 後悔という文字は、今の俺には似合わない。

 そう、確かに俺にはわかっていたんだ。

 今、このまま彼女との関わりを絶てば、きっと後悔するということが。

 だってそうだろう。久しぶりに――本当に久しぶりにこの俺が、予想もしなかった反応に戸惑ったり、笑ったり――少女との会話を楽しんでいるのだから。

 これが恋に変わるのかなんてまだわからない。

 たとえそうなったとしても、責める権利なんて誰にもない。

 だから選んだんだ――選択肢の多い道を。

 少女に対しても、そして――俺自身にも。

「付き合ってみないか?」

 そう言った時、少女は瞳を見開いた。

「茶道、教えてやるよ。週に一度、場所は俺の家。不安なら駄目元たちと一緒でいい。それでお互い見極めればいいだろう? これからずっと付き合っていきたい相手なのかどうかをさ」

 提案、というよりも、確信に近い俺の問い。

 そして少女は、頬を染めたまま、小さく返事をしたのだった。


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