下宿屋まろん
「僕」と下宿屋まろん
1
僕が「まろん」に来たのは他でもない。父と母が僕を持て余したからだ。
中学2年になった僕は、学校にほとんど行かなくなった。
きっかけはなんだったかはうまく説明できない。
ただ、中学デビューした友達が、イキがりながら給食を食べる姿に酷く嫌気がさしたのだ。
くだらない、くだらない。なんてくだらないんだろう。
僕の足はだんだんと学校から遠ざかり、梅雨明けにはほとんど家から出なくなった。
父と母は初めての事に困惑していた。
高校生の兄は、「まあ、いいんじゃない」とニヤニヤしながら傍観していた。
反抗期、というほど親を疎ましく思っていたわけじゃないので、家の中では普通に生活していた。
朝ごはんを食べ、部屋に篭り、兄が図書館から借りてくれた本をひたすら読んだ。
昼ご飯は母親が用意してくれたものを食べ、片付けも済ませて、また部屋に篭る。そんなふうに過ごしていた。
母はイジメを心配したが、顔の広い兄の庇護のおかげで、僕は特にイジメのターゲットにならずにすんでいる。
理由などないのだ、本当に。
ただ学校に興味がない、そういうと、母はさらに困った顔を見せた。