下宿屋まろん
「これならどう?」
トヨコさんが持ち出したのはピンクの花がついたヘアピンだ。
「え?」
「だから、これをこうして…」
「ちょっと、何を…」
トヨコさんが僕の前髪に触れてピンをとめる。
「ほーら、可愛い!」
僕は食堂の窓ガラスを見て呆然とする。
「嫌ですよ!こんなの!」
パシリとピンを取る。
「えー、ダメかしら?よく似合うと思うんだけどなぁ…」
トヨコさんは、泣き落とし……にかからなかった。
ただただ無言で僕をじっと見つめるのだ。
沈黙に耐え切れなくなった僕は言った。
「………せめて、黒にしてください」