下宿屋まろん
黒のヘアピンが髪を引っ張っていることと、久しぶりに視界がひらけたことに、慣れないまま、僕の部屋へと案内された。
階段のすぐ下の扉を開けると、うちの6畳の部屋と同じくらいのフローリング。
折りたたみ式のベッドに、小さいテーブルと椅子。
クローゼットは小さめだけど、僕は着替えもそんなに持ってきてないし、充分な広さだ。開き戸の内側には鏡もついている。
トヨコさんは、カーテンを開けた。
太陽に照らされた芝生がよく見える。
出窓の埃を確認して言った。
「今日からここがケイちゃんの部屋。布団は今干してあるから、後で取り込んでね。部屋のカギはこれ。プライバシーはきちんと守ります。あと、これが重要なんだけど」
「食事は食堂で、みんな集まって食べます。お昼は仕事のある子もいるから、朝と夜ね。もし何か用事がある場合はきちんと私に報告すること」
「これが『下宿屋まろん』のルールです」