下宿屋まろん
トヨコさんが来たのは、天気予報で梅雨明けが発表された次の日だった。
白地に赤い花が大きくプリントされたワンピースに、クリーム色のカーディガンを羽織り、フリルのついた日傘にサングラスをかけてやってきた。
2階のベランダで自分の布団を干していたら、玄関口に見知らぬ女の人。
僕はまじまじとその人を見つめた。
玄関チャイムが鳴って、母がドアを開ける。
女の人は、ドアに吸い込まれた。
母は、すぐに僕を呼びに来た。
なんのことだかわからない僕は、リビングで優雅にコーヒーを飲む女の人の前に座らせられた。
サングラスを外した目尻に微かにシワがよっていた。
爪には、真っ赤なマニキュア。濡れたみたい唇。
「この子が?」
女の人は、母に聞いた。
「え、えぇ」
母は答えた。
「今いくつになるんだっけ?」
「14歳よ。中学2年生」
ふーん、そう。
女の人は、上から下まで視線を滑らせると微かに頷いて言った。
「わかったわ、姉さん。この子がよければ」