下宿屋まろん
母とトヨコさんのやり取りはこうだ。
トヨコさんは人手を欲しがっていた。
母は僕を持て余していた。
たまたまトヨコさんからの電話に、母は僕の事を話した。
トヨコさんは、どうせ学校に行かないのならうちを手伝って欲しい、と伝えた。
そして、僕に会いに来たのだ。
「力仕事もあるけど」
トヨコさんはそう言って、僕の白くひょろりとした腕を見る。
「まあ、慣れると思うわ」
「もちろん、それなりの報酬もあるし。どうかしら?」
僕は黙り込む。
勝手にそんな話をしていた母に腹が立った。
嫌だ、というのは簡単だ。
でもそう言ってしまえば、また元の日常に戻るだけだ。
僕は覚悟を決めた。