下宿屋まろん
中に入ると、ひんやりと涼しかった。
靴を脱ぎ、トヨコさんの出してくれたスリッパを履く。
ここにある可愛らしいスリッパ達が、ここの住人のものなんだろう。
靴を揃えて横に寄せ、振り返ると、ツヤツヤとした木張りの廊下と階段がお出迎えしてくれた。
古びてはいるけど、綺麗に掃除が行き届いている。
トヨコさんの後について、廊下の突き当たりから左側の部屋に入る。
「ここが食堂よ」
木目がはっきりとわかる明るい色の長テーブルの上には、名前を知らない白い花が生けてあった。
トヨコさんは僕に振り返り、
「ようこそ、『下宿屋まろん』へ」
そう言って笑った。