下宿屋まろん
「いや、無理でしょう!!」
僕が言うと、トヨコさんは、
「だーいじょうぶよー!だってほら、ケイちゃんって呼ばれたことあるでしょ?」
「それは、ありますけど……」
そう、僕の名前は「佳」と書いてケイと読む。
「それに、髪の毛もちょっと伸びてるし、違和感ないわよー」
「それでもちょっと無理があるんじゃあ…」
「そうねぇ、あ、ちょっと待ってて」
パタパタと、トヨコさんは食堂の外へ出ていった。
―――女の子のフリをする?僕が?
僕は、食堂の窓ガラスに映る自分を見つめる。
身長はそう高い方ではない。
前髪は、目にかかっている。
黒のTシャツに緩いデニム。
痩せぎすの体、色白の肌。
―――ちょっと頑張れば、いや、それでも。
無理があるだろう。僕が一人で頷いたその時だ。