君の言葉を胸に
五節
「………っ紗菜」
いつの間にか夜になっていた。
紗菜は見つからない。
家に行ったがいなかった。
多分、そんときは高校に行ってたから。
紗菜、お前に言いたいことがあるんだ。
迷ってたけど、やっと、俺なりの答えが出たんだよ。
だから会いたい。
会いたいんだ。
「野村!」
「っ!?」
呼び止められ振り向くと、多田さんがいた。
「多田さん…!紗菜、紗菜どこにいるか知ってる…?」
「分からないの。紗菜、どこにもいないの」
え………。
「昨日、帰ってきてから様子がおかしくて…」
昨日?
昨日は、明と話して…そっか。
あのとき、紗菜もいたんだ…。
あの話、聞いてたのか。