君の言葉を胸に





しばらく走っていると、ある公園に人が集まっていた。


人をかき分け、集まっている中心に行ってみる。


「………あっ、あああ…ああァ………っ」


真ん中にいたのは、血まみれの


―――松山さんだった。


「これ…。この人、どうしたんですか…?」


隣の人に聞いてみる。


声が震えた。


「最近、通り魔がよく出没するでしょ?刺されたみたい。まだ若いのにかわいそうよね…」


通り魔………。


隣にいるおばさんは、他人事のように言った。


なんだよ、なんでだよ。


今日、松山さんは俺の親に挨拶して、動物園に行くんだ。


ペンギンを見て松山さんは言うんだ。


“可愛いね”って。


そして二人で笑うんだ。


二人で……一緒に過ごすんだよ…。


ピーポー ピーポー


後ろから、救急車の音だけが聞こえた。





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