君の言葉を胸に
――ピンポーン
『はい。あれ?陽と…恵介くん?』
俺の名を呼ぶ声が、呼び方が、なんとなくぎこちなかった。
『ちょっと待ってて。外出るから』
しばらくして、河原さんが出てきた。
「…どうしたの?」
「俺さ、高校のときなんかあった?」
聞いた瞬間、河原さんの顔が強張った。
なにか、あったんだな。
「恵ちゃん、思い出したの…?」
恵ちゃん?
今まで、俺のことそう呼んでたのか?
思い出したって…まるで俺が……。
……………。
「……俺、記憶がないのか…?」
声が震えた。
そんな、そんな訳ないよな。
大丈夫、大丈夫。
そう願っていた。