君の言葉を胸に
「…思い出してないんだね」
何かが崩れ落ちた気がした。
俺、記憶なくしたんだ。
そっか、だからあの女の子の名前が分かんなかったんだ…。
「教えてくれ…。なんで記憶をなくしたんだ…」
「……ショックが大きかったみたい」
ショック…?
俺に、何のショックがあったんだ。
………思い出せない。
何も思い出せない。
「ごめん、私からはもう何も言えない。後は原和田くんに聞いて…」
原和田に………?
「原和田くんの方が、詳しいから…」
それだけ言って、河原さんは家の中へ入っていった。
「野村…?」
心配そうな坂下さんの声が聞こえた。
それに応えられず俺は、その場に立ち尽くすしかなかった。