「愛してる」、その続きを君に


信太郎はブラブラと石畳の上を歩いていた。


焼きソバ、たこやき、フライドポテトにお好み焼き…


いろいろとありすぎて決められない。


それに大概こういう縁日で売られているものは、量が少ないわりにやけに高い。


そんなことを考えつつ歩いていると、小学生のわらわらと集まっている露店があった。


おもしろ半分に近寄ってみる。


歓声と溜息が入り混じるその群れの中を信太郎はのぞきこんだ。


くじ引きだ。


彼らは特賞のゲームソフトを狙っているようだが、誰も当たらない。


バカだな、特賞の当たりくじなんて入ってるわけないだろ、と内心笑いながら自分も昔、CDラジカセが欲しくて全財産をくじにつぎ込んで、母親からこっぴどく叱られたことを思い出した。


そんな中、煌々と照らし出された景品の中に、安っぽいビーチサンダルが並んでいることに信太郎は気付いた。


ポケットをまさぐる。


「おっさん、1回」と200円を差し出すと、子どもたちが驚いたように彼を見上げた。


まるで「いい年して」と言わんばかりの顔だ。


「なんだよ、文句あるのかよ。俺だって好きなんだよ、くじ引き」


そう言うと、子どもの一人が「当ててよ、特賞のゲームソフト」と言い始めた。


それがいつのまにか「ソ・フ・ト!ソ・フ・ト!」と大合唱となる。


「いや、俺はゲームソフトが欲しいんじゃなくて…」と小声で言ったものの、収まる気配は一向にない。


彼はまぁまぁと両手を上げてその声を制した。


「ま、とにかく見てろ」


そう言って、木製の大きな箱の中に手を突っ込んだ。


こいよ、ビーサン!と念じながら、一枚のくじをつかんだ。


手を引き抜くと、ワクワクしながら子どもたちは彼の手元をのぞきこむ。

< 11 / 351 >

この作品をシェア

pagetop