「愛してる」、その続きを君に
信太郎はブラブラと石畳の上を歩いていた。
焼きソバ、たこやき、フライドポテトにお好み焼き…
いろいろとありすぎて決められない。
それに大概こういう縁日で売られているものは、量が少ないわりにやけに高い。
そんなことを考えつつ歩いていると、小学生のわらわらと集まっている露店があった。
おもしろ半分に近寄ってみる。
歓声と溜息が入り混じるその群れの中を信太郎はのぞきこんだ。
くじ引きだ。
彼らは特賞のゲームソフトを狙っているようだが、誰も当たらない。
バカだな、特賞の当たりくじなんて入ってるわけないだろ、と内心笑いながら自分も昔、CDラジカセが欲しくて全財産をくじにつぎ込んで、母親からこっぴどく叱られたことを思い出した。
そんな中、煌々と照らし出された景品の中に、安っぽいビーチサンダルが並んでいることに信太郎は気付いた。
ポケットをまさぐる。
「おっさん、1回」と200円を差し出すと、子どもたちが驚いたように彼を見上げた。
まるで「いい年して」と言わんばかりの顔だ。
「なんだよ、文句あるのかよ。俺だって好きなんだよ、くじ引き」
そう言うと、子どもの一人が「当ててよ、特賞のゲームソフト」と言い始めた。
それがいつのまにか「ソ・フ・ト!ソ・フ・ト!」と大合唱となる。
「いや、俺はゲームソフトが欲しいんじゃなくて…」と小声で言ったものの、収まる気配は一向にない。
彼はまぁまぁと両手を上げてその声を制した。
「ま、とにかく見てろ」
そう言って、木製の大きな箱の中に手を突っ込んだ。
こいよ、ビーサン!と念じながら、一枚のくじをつかんだ。
手を引き抜くと、ワクワクしながら子どもたちは彼の手元をのぞきこむ。