「愛してる」、その続きを君に
「はい、お菓子の詰め合わせね」
その店主の一言に、期待は溜息へと変わった。
詰め合わせ、というには程遠い小さな駄菓子の入った袋を店主は差し出す。
「期待させといて、そりゃないよ、兄さん」と小学生の一人が言った。
「おいこら、待て。勝手に期待したのはおまえらだろ」
信太郎は再びポケットに手を突っ込んだ。
「おっさん、もう一回」
すると、おおっと周りからどよめきが起こる。
「さすが兄さん。前髪が立ってるだけのことはあるよな」
「うるさい、からかうなって」
信太郎は気合を入れて、丸い穴に手を突っ込んだ。
今度こそ。
今度こそ。
…今度こそ…
何度やってもお菓子の詰め合わせか、ちゃちい玩具しか当たらない。
信太郎はとうとう夏海に預かった千円以外の有り金を全部つぎ込んでしまった。
「おっさーん、当たりくじ入ってんのかよー」
最後の一回も外れ、彼は天を仰いで愚痴った。
「兄ちゃん、人聞きの悪いことを言わんでくれ。あんたに運がないだけだ」とやにで黄ばんだ歯を見せて店主は返す。
「こんなビーサン、普通に買ったほうが安いじゃん」
ふてくされた信太郎の言葉に、子どもたちはすっとんきょうな声をあげた。
「ビーサン!?」
周りがざわめく。
「兄さん、ビーサンが欲しかったわけ?」
甲高い声で誰かが言った。
「そうだよ!俺はビーサンが欲しかった・ん・だ・よ!悪いか」と信太郎はやけくそ交じりに頭をかきむしった。
「なぁんだ、それなら早く言ってくれればいいのに。だったら、やるよ。俺当たったんだけど、こんなのいらねぇなーって思ってたとこ」