「愛してる」、その続きを君に
石段を下りると、くじ屋の前で集まっていた小学生が自転車にまたがって、ビー玉の入ったラムネを飲んでいた。
まずいやつらに会ってしまったな、と信太郎は思った。
「さっきのお兄さんじゃん。お菓子ありがとね!」
「お…おぅ」
軽く信太郎は片手をあげる。
「あれ?その人、彼女?」
「そんなことどうでもいいから早く帰れ、帰れ。こんなに遅くまで遊んでたら駐在のおっさんに怒られるぞ」
しっしっと手を振ると、彼は「最近のガキはマセてるな」と独り言のようにぼやいた。
「お菓子って何?信ちゃん、あの子達にお菓子あげたの?」
夏海が不思議そうにのぞきこんでくる。
「あ?まあ、ボランティアみたいなもんだよ」
「ふうん」
「あ!!」
小学生の群れから、突然大きな声があがった。
「あの人、遥の兄さんじゃない?」
一斉に小さな瞳が雅樹に向けられた。
当然、当の彼はその突然の視線にたじろぐ。
「そうでしょ?辻本遥って妹でしょ?」
「ああ、そうだけど。遥の同級生?」
「うん」
雅樹はある事を訊くべきかどうか悩むように、下唇を舐めた。
「えっと、遥は一緒じゃないの?友達と祭に行くって言ってたけど」
「それは…」
彼らは皆一様に小麦色に焼けた顔に白い歯がのぞかせると、「なぁ?」とにやつきながら、何か言いたげに雅樹を見た。
そんな様子にピンと来た信太郎は「おい、何だよ、言えって」と、彼らが言わんとすることがわかっているにもかかわらず、たきつけた。