「愛してる」、その続きを君に
「池田ってやつと一緒だと思うよ。仲いいし、あいつら」
彼らのうちの一人がそう言うと、歓声が起こった。
「やっぱ池田くんか」と信太郎もニヤニヤして雅樹に目をやる。
「そっか」
そっけなく答えた雅樹は、ひきつった笑みを浮かべてスタスタと歩き始めた。
夏海と信太郎は慌てて後を追う。
「やべっ、怒ったかな」
「信ちゃんのせいだからね。いつもいつも余計なことばっかりするんだから」
「悪かったよ」
小声で言い合う二人。
「おい!雅樹、気にすんなよ!」
「別にしてないけど」
間髪入れない淡々とした彼の返事が、余計に怖い。
「参ったな」
信太郎が頭をかいた。
「ちょっとからかっただけなのにさ」…と小さく言うので、彼女は肘で彼の腹を小突いた。
「もう!」
「参ったな」
信太郎はもう一度呟いた。
一方夏海は、雅樹に対して何も言葉を発することができなかった。
さっきあんなことがあったばかりなのだから無理もない話だ。
下駄を左手に、買ったばかりの風鈴を右手に、夏海は柔らかな足の感触を感じながら小走りで雅樹を追った。
チリン、チリンと寂しくそれは辺りにこだました。