「愛してる」、その続きを君に
いつも目が覚めるたびに思う。
何もかもが夢だったのだ、と。
白いカーテンレースが窓を半分覆い、白い壁に白い天井、シーツも言うまでもなく真っ白。
色と言えば、窓から見える海と空の青だけ。
この際、雲はいらない。
白はもう飽きた。
空と海。
彼らはいつも仲がよくて、空が朱色に染まれば、海も紅く染まる。
空が暗くなれば、海は漆黒色となる。
空が曇れば、海も霞む。
でも彼らはまったく同じ色になるわけではない。
空には空の、海には海の「色」がある。
まるで個性とでもいうべきだろうか。
個性…いやそんな生ぬるいものではない気がする。
同じ色に染まってはならない運命なのだ。
ひとつになることを許されない宿命なのだ。
まるで自分たちのようだと、そう思う。
水平線。
その細い糸に隔たれただけのように見えるのに、それをどうやっても断ち切ることはできないし、この世の果てまで行こうとも、空と海が交わることはない。
きっとこの世をお創りになった神が、天と海が寄り添うことを許さなかったのではないか、と彼女は思う。
そう思うしかない。
だから自分たちはこのように引き裂かれてしまったのだ、と。
全ては神が定められたものなのだと、そう思わなければ生きていけないところまできている。
窓から入ってくる潮風が、夏海の手元の便箋を宙へと巻き上げた。