「愛してる」、その続きを君に
「だから田舎者は参るんだよ。一流企業の課長クラスの男が独身なわけないだろ。そんな嘘を真に受けたほうがバカなんだよ!」
信太郎はそんな高林の言葉を聞きながら、途切れ途切れに息を吐いた。
「でももう別れたはずでしょ!なのにいつまでもヨリを戻そうってつきまとって!課長のほうがおかしいわよ!」
そんな恵麻の声は悲鳴に近かった。
「だから、お互い割り切った交際をしようって言ってるんだろ。君も見かけによらず、頭が固いね」
ふんっと高林は鼻で笑うと、額にかかる髪を指で払った。
「…とにかく」
二人のやりとりを黙って聞いていた信太郎は、定まらない視線のまま口を開いた。
「…とにかく、二度と姉に変な真似はしないでください」
そう言うのがやっとだった。
口の中が渇いて、声がかすれた。
そんな彼の言葉をよそに、高林は細めた目で恵麻をとらえた。
「なぁ、恵麻?君はあんなに僕のことを愛してるって言ってたじゃないか。あれは嘘だったのかな?もしそうなら、困った子だねぇ」
甘えた声の男の顔が豹変した。
「そんな子にはおしおきしなきゃな!」
そう声を張り上げると、恵麻につかみかかって行った。
「やめてっ!」
公園中に女の叫び声が響くも、彼ら当事者以外誰もいない。
「何すんだよ!!」
恵麻をかばって、間に入った信太郎の胸ぐらを高林はつかんだ。
「引っ込んでろよ、ガキ」
「あんた、自分のやってることわかってんのかよ」
「会社にでも警察にでも、連絡したけりゃしろよ。だけどおまえの姉貴は不倫して妊娠したってみんなの知るところになるんだ。しかも中絶したんだぞ?殺したんだぞ?何の罪もない赤ん坊を」
「あんたにだって責任はあるだろ!」
握りしめた拳がわなわなと震える。