「愛してる」、その続きを君に
「信太郎!手を出しちゃだめ!絶対にだめ!」
二人を引き離そうとする恵麻の頬を、高林はいきなり叩いた。
小さな悲鳴と共に彼女が倒れ込むと、夏の暑い陽射しで乾ききった砂が舞い上がる。
「恵麻!」
胸元の男の手を振り払うと、信太郎は姉の元に駆け寄った。
抑えがたいほどの感情がふつふつと湧き上がってくる。
それを察してか、恵麻が「信太郎、絶対に手を出さないで。お願い」と懇願した。
怒りに乱れる呼吸を何とか調えながら、「わかってる、わかってるから」と自分に言い聞かせるように彼は呟いた。
「おい、ガキ。その女がどれだけ俺の前では淫乱か教えてやろうか。」
「…やめろ…!」
「おまえにも彼女くらいいるだろ?もうやったのか?いい方法教えてやるからさ、一度試してみろよ」
「やめろって言ってんだよ!!」
怒りに満ちた目で、信太郎はあざ笑う高林をにらんだ。
「けっ!偉そうなこと言うくせに、あっちのことはてんでダメなのかよ。所詮お子ちゃまだな。ちなみに、姉貴の一番感じてる顔を見たことあるか?ちゃんと携帯で写真撮ってんだ。おまえの彼女と比べてみるか。送ってやるよ」
「黙れ!変態野郎!」
変態、その言葉に高林の笑みが一瞬にして凍り付く。
しかし、次に出てきた言葉はまるで幼子に問うような柔らかいものだった。
「ん?今何て言ったのかな?変態って聞こえた気がしたけど?」
「ああ!変態って言ったんだよ、このストーカー野郎!妻子持ちのくせして、姉貴に手ぇ出すなよ!この変態上司が!」
「あはっ…変態?この俺が?」
薄気味悪い笑みを浮かべながらプルプルと全身が震えたかと思うと、高林は何のためらいもなく信太郎に突進していった。