「愛してる」、その続きを君に
「もうあの二人に関わらないで。私たちはお父さんの仕事の都合でここに住んでいるだけで、元々この土地の人間じゃない。深いつきあいは必要ないでしょ」
「母さん、そんな言い方はないだろう。二人は俺にとっては大切な幼なじみなんだよ」
「本当に?」
薫の目がきらりと光った。
「どういう意味だよ」
「本当に幼なじみなだけ?佐々倉さんに関しては、それ以上じゃないの?」
「母さん…」
遥はどうしてよいのかわからず、半分泣き顔で助けを求めるように父親に目をやった。
「あの子が病気だろうが、うちには関係ないじゃない」
「母さん!」
雅樹は思わず席を立った。
「遥の前でそういうことは言わないでほしい」
妹は母が夏海を嫌っていることを知らないのだ。
雅樹がちらりと妹を見ると、大きく見開かれた目からポロポロと涙がこぼれ落ちている。
「もういい加減にしないか、薫」
やっと、とでも言いたいくらいのタイミングで父が割って入った。
「よそさまのことを、そんなふうに言うもんじゃない」
「だってあなた!天宮くんや佐々倉さんのせいで、雅樹は同類だと思われてるのよ。せっかくW大の医学部に現役で入ったのに、台無しじゃない」
「いい加減にしてよ、そんな言い方!」
たまらず雅樹が声を張り上げる。
込みあげる怒りを抑えながら、彼は妹にできるだけ穏やかに言った。
「遥、ごめん。父さんと母さんにちょっと話したいことがあるんだ。おまえは部屋に戻っててくれないかな」
「……」
「な?」
こくん、と頷き、彼女は怯えた表情で母親を見ると、足早に階段を上がっていった。
そして遥の部屋のドアが閉まる音が聞こえたのを確認すると、雅樹はゆっくりと腰をおろした。