「愛してる」、その続きを君に
「知ってると思うけど、なっちゃんにはもう残された時間は少ないんだ。武ばぁもいないし、信太郎もあんなことになって…」
「だからおまえが彼女を支えたいと?」
「うん、そうしたいんだ。だから…」
「おまえがそばにいてどうなる?彼女の気持ちを支えられるという確証はあるのか?かえってありがた迷惑ということもあるんだぞ」
「それは…」
「おまえは天宮くんじゃないし、天宮くんにもなれない」
「…父さん」
「そんな中途半端な立場で、その上宙ぶらりんな気持ちでそばにいたって、佐々倉さんにとっては迷惑になるだけだ」
「なっちゃんに対する俺の気持ちは、父さんが思うようなものじゃないよ」
「どういう意味だ」
雅樹はごくりと喉を鳴らした。
そして静かに、まるで湖面を波立たせることなく吹く風のように、雅樹は言った。
「なっちゃんが好きなんだ」
しん、と静まりかえるダイニング。
「彼女を誰よりも大切に想ってる。だから最期の最期まで、そばにいたい」
「やめなさいっ!」
とうとう薫が甲高い声を上げた。
「あんたはまだハタチになったばっかりでしょ!あんな子のために大事な人生を棒に振る気!?」
「もうハタチだよ、母さん」
「絶対に休学なんて許さない!二度とあの子のところには行かせない!」
寛治は険しい顔のまま、腕組みをした。
「あんたは母さんとあの子のどっちを取るの!?」
「そういう問題じゃないだろ?」
「いいから答えなさい!」
薫は完全に取り乱していた。
雅樹はそんな母に向き直ると、静かに「ごめん」と謝った。