「愛してる」、その続きを君に
着替えを持ち、夕方に病室に戻っても夏海はまだ眠ったままだった。
寝返りひとつしていない。
克彦は娘の顔をのぞきこんだ。
目の下のくまが、日に日に濃くなっている気がする。
今日背中におぶった時の、あまりの娘の軽さ。
しっかりつかまえていないと、羽根が生えて飛んでいっていまいそうなほどだった。
後から後からあふれ出る涙を、指で何度もぬぐっていると、ドアをノックする人物がいた。
「はい、どうぞ」
そう声をかけても、ドアが開く気配は一向にない。
「どうぞ」と少し声を張り上げてみると、ためらいがちに小さくドアが開いた。
「こんな時間に申し訳ありません。辻本雅樹の母です」
克彦はその言葉を聞いて、飛び跳ねるように立ち上がると頭を下げた。