「愛してる」、その続きを君に
「ねぇ信ちゃん。
私ね、明日で21になります。
早いものだね。一緒に学校通ったり、遊んだり、けんかしたりして、あっと言うまにこんな年だもんね。
いつか話したよね。
幼なじみって不思議だねって…
恋ってどういうものかわからないくらい小さい頃から、ずっと一緒にいたね。
そのせいで、惹かれてても自分が恋してるんだって認めるのが怖くて…
遠回りと回り道を繰り返して、やっと素直になれたのに。
お父さんがね、誕生日プレゼントは何がいいかって聞いてくれたの。
正直、私は何もいらない。
だけど、もし神さまがこんな私を憐れんで何かひとつ願い事を叶えてくれるなら、迷わず信ちゃんに会いたい、そう言うの。
それが叶わないのなら、せめてこの波が哀しみだけをさらっていってくれるようにって、お願いする。
楽しい想い出だけを持っていきたいから。
ごめんね、信ちゃん。
待ってるって約束したのに、
私、あなたを待てなかった。
重ね合わせるはずだった未来も、
愛してる、そんなあなたの言葉の続きも、
私、楽しみにしてたのに。
待てなかった。
どんなに頑張っても、待てなかった。
ごめんね、本当にごめんね。
だからこれからは、
ひとり残ったあなたを、私は星となって静かに見守ることにする。
あなたの大好きな星になれたなら、たまには空を見上げてくれるでしょ。
いつもそこにいるから。
いつもそばにいるから。
私ね、信ちゃんのことをいつもいつも想ってる。
心配してる。
信ちゃん、大好きだよ。
だけど、もうこの気持ちは形には残さないよ。
これから先、きっとあなたを苦しめることになるから。
この愛は私だけが知っていればいいこと。
私が勝手に信ちゃんを想い続けると決めただけのことだから。
どうか…
どうかこの恋の想い出が、あなたの重荷になりませんように。
あなたが新しい人生を歩めますように。
信ちゃん。
あなたにに会えてよかった。
あなたに恋してよかった。
そのためだけに生まれてきたって、心底思えるの。
今まで、ありがとう…」
胸元に置いてあった彼女の白い手が、静かに滑り落ちた。