「愛してる」、その続きを君に
彼は夢を見ていた。
どこまでも続く砂浜。
豊浜の海岸だとすぐにわかった。
真っ青な海と、真っ白な砂。
けれど、どういうわけか空の色は蛍光灯のように白くて眩しかった。
信太郎は先を駆けていく後ろ姿に、声をかけた。
「おい!そんなに急いでどうすんだよ」
振り返った彼女は、まるで風のドレスを身にまとった妖精のようだ。
海風になびく、柔らかな癖のある髪の毛を押さえながら明るい笑顔をむける
「信ちゃ………」
彼女は声をはりあげるも、風にかき消され最後まで聞き取れない。
「何?」
問い返す信太郎にイタズラな笑みを浮かべると、彼女はまた軽やかに砂浜を歩いていく。
また風が彼女のスカートの裾を抱いて踊る。
「待てって」
彼も追おうとするが、何故か自分の足下だけは砂が行く手を阻んで、思うように進めない。
「おい、ナツ!」
急にふつふつと嫌な予感が湧き上がってきて、信太郎は大声でその名を呼んだ。
「ナツ!!」
後ろ姿がどんどん小さくなっていく。
焦れば焦るほど、砂に足をとられてしまう
「くそっ、なんなんだよ!」
砂を蹴り、舌打ちをした時だった。
ふわりと頬に柔らかな感触があった。
驚いて顔をあげる。
「おまえ…」
目の前にはなぜか先に行ったはずの彼女が立っていた。
彼を見上げ、優しくその頬を両手で包む。