「愛してる」、その続きを君に
彼ら、辻本雅樹、天宮信太郎、佐々倉夏海は、夏休みのこの夏祭りの日に集まった。
世間でよくいう幼なじみだ。
まだ日が落ちきらない、午後7時過ぎのことだった。
カランコロンと軽快なリズムを下駄で奏でながら、夏海が二人の青年の前に現れた。
「似合うね、なっちゃん」と、目を細めて優しく微笑みかける雅樹。
そして「高校生にもなってうかれすぎだろ」と憎まれ口をたたきながらも、照れたようにうつむく信太郎。
そんな二人の前で、彼女はおどけてモデルのようにクルッと身を翻した。
「どう?」
「うん、きれいだよ」
相変わらず優しい言葉を雅樹はかけてくれる。
「ありがとう、マーくん」
満面の笑みで夏海はそれに応えたが、「ほら、行くぞ」という信太郎の言葉に彼女はムッとして訊いた。
「信ちゃんは?何か言うことない?」
「ノーコメント」
そう言って、背を向けたまま彼は手をヒラヒラと耳元で躍らせた。
「かっわいくない」
信太郎の後ろ姿に頬を膨らませた夏海の肩を、雅樹が「行こう」とばかりにそっと押し、言った。
「照れてるんだよ、きっと」
「そっかなぁ」
雅樹に促されて踏み出した一歩は妙に陽気な音で、カランと響いた。
夏海を真ん中に、両脇を信太郎と雅樹が挟むようにして歩いてゆく。
「大学生になったら思いっきり三人で遊びたいな、旅行とかさ、いろんなことできるよね」と、雅樹が言った。
「げっ、やな奴。そう思うだろ、ナツ?」
「うん、ほんとよ、嫌味ー自分だけ頭いいからって。私たち大学生になれるかわかんないし」
そう言って夏海は信太郎にぺたりと寄り添った。
「こらこら、俺と距離を置かないでよ。深読みしすぎだって」
彼らと自分との距離を指差しながら雅樹は笑った。
「見て、信ちゃん。マーくんったら焦ってるよ」
「なっちゃんも意地が悪くなったなぁ、信太郎病だよ」
「おい、それはどういう意味だよ」と信太郎。
「信太郎病かぁ、それもやだなぁ」と言いつつ、雅樹と距離をとる夏海。
「だから、なっちゃん!俺との距離を広げるなって!」
あはは、そう声を立てると彼女は持っていたうちわで煽ぎながら、信太郎、雅樹のちょうど真ん中に位置を戻した。
そんな三人は、現在高校2年生。