「愛してる」、その続きを君に

焦れば焦るほどに手が震えて、中の便箋が出てこない。。


やっとのことで開いた手紙。


そこには弱々しいものではあったが、まだかろうじて読める字が並んでいた。


「信ちゃんへ。お元気ですか」からはじまる彼女からの手紙だった。


そして雅樹から手渡されたのもきっと…



「おい、雅樹!どういうことだよ!あいつは!?ナツは!?」


目の前の幼馴染みに勢いよくつかみかかった。


海風で何枚もの便箋が宙に舞う。


ひらひらとまるで木の葉のように。


「答えろよ!ナツなんだろ、これを書いたのは!あいつは今どこだよ!」


彼は激しく雅樹を揺すった。


「やっぱり読んでなかったんだ…」


目を閉じたまま口の中でモゴモゴと言う相手に、彼は苛立ちを募らせた。


「雅樹!」


すると今度は雅樹が負けない程の力で彼の胸元をつかんだ。


「…今さら何言ってるんだよ」


怒りに満ち満ちた声だった。


「今さら?今さらってどういう…」


「なんで読まなかった?なっちゃんからの手紙、なんで読まなかったんだよ!!」


あまりの剣幕に肩をつかんでいた彼の手が緩む。


「何通も何通も送ってただろ?なんで読まなかった?!読んでたら気付いたはずだ、なっちゃんに大変なことが起こってるって!それに突然手紙が来なくなっただろ、おかしいとは思わなかったのか!」


雅樹がどんっと彼をつき倒した。


踏ん張る気力もなく、彼は尻餅をつく。


「なんでだよ、信太郎!!」


打ち寄せる大きな波の音に、雅樹の叫びはかき消された。


「おい…なんだよ、大変なことって…」


嫌な予感を覚えつつ、信太郎は絞り出すように問うた。


「おまえ!」

雅樹は彼に馬乗りになると拳を振りあげた。


その目には涙がにじんでいるのに信太郎は気付いた。


殴られる、そう覚悟して目を閉じた時だった。

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