「愛してる」、その続きを君に
「…夏海は死んだよ」
「本当に申し訳ありません…」
その様子に、信太郎が娘の死を知っていたのだと悟った克彦は歯を剥き出した。
「だったら今さら何の用だ!あれだけ夏海が手紙を出したのに!会いたいって言ったのに!返事すら寄越さずに!」
克彦は服が引きちぎれそうなほどに信太郎の胸元を揺さぶった。
「おまえは夏海のことを、どう思ってたんだ!」
克彦がそう叫んだ直後、左頬に鈍い痛みと熱を感じて信太郎はよろめいた。
「なあ、信ちゃん!どうなんだよ!俺は、信ちゃんが夏海のこと嫁にもらってくれると思ってたんだぞ!」
信太郎は返す言葉が見つからなかった。
殴られた左頬がジンジンする。
それが伝播して頭痛をも感じる。
「信ちゃんが罪を償って出てきたら、小さいけど結婚式あげよう、金は俺が出してやるからって…」
嗚咽をこらえながら、克彦はその場にしゃがみこんだ。
そして両手で顔を覆う。
先ほどとはまるで別人のように弱々しく彼の目に映った。
「俺だって、信ちゃんが婿なら大歓迎だって思ってたのに…」
そう言うと、背中を丸めるようにして目の前の白髪混じりの男が声をあげて泣き出した。
その姿がやけに小さく見えた信太郎は、ゆっくりと両膝を降り、雑草だらけの玄関前で手をついた。
「すみません、おじさん…本当に申し訳ありませんでした」
それ以外の言葉は思い付かなかった。